白く輝く記憶のかけら

つつむコラム-塚本将人写真展
photo/GOWASU(タケウチタカヨシ)

ことばにできない。
塚本さんの写真を見るたびに、いつもそう思います。

特別なことなどなにもない、ふだんの姿の写真です。
コンビニのおにぎりだったり、アンパンマンの手作り椅子だったり、MUJIのボーダーTシャツだったり。
お洒落に美しく整えた姿を撮るでもなく、アヴァンギャルドに乱れた姿を撮るでもなく、穏やかにリラックスした光景が続きます。
どこかで見たような光景なのに、胸がぎゅっと締め付けられるような気持ちになる。
胸をぎゅっと締め付けられているのに、その気持ちをぴったりと表現することばが見つからない。
ふだん当たり前にありすぎて、その大切さを忘れてしまっているものごとひとつひとつを、すっと差し出された気持ちにかられるからでしょうか。
こんなにもすらりと「ほんとうに大切なものごと」を見せてもらってしまって。
とりとめのないふわりとしたことばでは、この気持ちを表現するのが難しいと思ってしまうのです。

塚本さんは「永遠のカメラ小僧」だなぁといつも思います。
いつだって彼は、まるで身体の一部のようにカメラをぶら下げていますが、家族を撮るカメラにはあまりこだわりはなく、その時のお気に入りを使うスタイル。
スマートフォンのカメラでもポラロイドでも、デジタルでもフィルムでも、何で撮っても塚本さんらしさがにじみ出る写真になります。
光の加減を見ていたり、構図のことを考えていたり、シャッターチャンスを狙っていたり。
常に心のどこかで写真のことを考えている様子なのに、写された景色は、工夫の跡を感じさせずあくまでも有り様のままで、加工していないのに輝きを放っています。

無作為にみえる作為が、ことばにできない作品を生み出している。
わたしたちがふだん忘れてしまいがちな大切なことを、気負うことなく、声高に叫ぶでもなく、さらりと表現している。

「結婚するときに『写真だけは撮らせて』って約束した」と、塚本さんから聞きました。
いいよと返したりささん。被写体は、りささんだけの時代から、ゆいさんが増え、こころさんが増え、9年の月日が経ちました。
そうして撮りためた写真のことを、塚本さんは「栞」みたいだと表現しました。
はじめてそのことばを聞いたとき、栞みたいなサイズの写真がひらひら空から舞い降りて、雪のように降り積もってゆく光景を思いました。

白く輝く記憶のかけら。

今回の展示は、この栞の、ほんの少しを並べたひとつの物語です。
のんびりとひなたぼっこをするような気持ちでご覧いただけたらうれしいなと思います。
そして、今度のお天気のいい休日に、家族の写真を撮ってみようかなと思ってくださる方がひとりでもおられたら、こんなにうれしいことはないと思います。
(文/ tamakiokai)

 

塚本将人写真展-栞-
12/2~12/23開催塚本将人写真展-栞-